数列の極限 のバックアップソース(No.5)

【2】[[数学]] Mathematics
【2.3】[[解析学]]
【2.3.1】解析学基礎
【2.3.1.d】数列の極限 Limit of a sequence

#contents

※1 このページではMathJax を利用しております。環境によっては数式を表示できないかもしれません。


※2 この項で数列という場合、特に言わなくても無限数列のことを指します。




*とりあえず単位を取りたい [#fcb0eded]

**数列の収束の証明の定型文[#geab78f8]
&mathjax{\displaystyle \lim_{x \to \infty} a_n=a}; の証明:定型文 

任意な &mathjax{ \epsilon>0 }; に対して、

1つの自然数を &mathjax{ N> ( \epsilon の式 ) };  となるようにとれば、

&mathjax{ n>N }; ならば、&mathjax{ | a_n - a | =  \fbox{nの式} < \fbox{Nの式} <\epsilon };


&BR;


**数列の無限大への発散の証明の定型文 [#b8fde983]

&mathjax{ a_n が \infty に発散する証明:定型文};

任意な &mathjax{ M>0 }; に対して、

1つの自然数を &mathjax{ N> ( \epsilon の式 ) };  となるようにとれば、

&mathjax{ n>N ならば、  | a_n - a | =  \fbox{nの式} > \fbox{Nの式} >M };
*数列の極限 [#v4b0d5c3]

高校でも習った通り、数列の極限には以下のパターンがある。

-[[ある値に収束する>#converge]]
-発散
--無限大に発散する
--振動

この3パターンについて、より厳密に考える。


*数列の収束 [#converge]
**収束の定義(ε-N論法) [#f52ac6e5]

高校レベルにおいては、数列の「収束」は、&BR;
「&mathjax{n};が限りなく大きくなると、 &mathjax{a_n}; がある値 &mathjax{\alpha};無限に近づくとき、 &mathjax{\alpha};に収束するという。」&BR;
また、このとき、&BR;
&mathjax{\displaystyle \lim_{x \to \infty} a_n= \alpha }; または&mathjax{ a_n \to \alpha ( x \to \infty )};と書ける。

しかし、これは厳密に考えると正確な表現とはいえない。
厳密な収束の定義は以下のようになる。

----
【ε-N論法(数列の収束の定義)】 [#DefinitionOfConvergentOfSequence]
「任意な正の &mathjax{\epsilon};について&color(Red){( &mathjax{ \forall \epsilon  > 0 }; )}; 、
それに対して適切に &mathjax{N}; をとれば、&color(Red){( &mathjax{ \exists N \in \mathbb{N} }; )}; 、
&mathjax{N};より大きい全ての&mathjax{n}; に対して、&color(Red){( &mathjax{ \forall n > N  }; )}; 、
&mathjax{|a_n - \alpha| < \epsilon}; とすることができる。  」
----

**ε-N論法の意味 [#ec3794e9]

上のように収束の定義を言われて、すぐにこれを理解できるかというと、できる人はできるが、おそらく多くの人はちょっと厳しいのではないのだろうか。
というわけで、その意味を詳しく見ていく。


&mathjax{a_n};を直接扱うのはちょっと大変なので、&mathjax{|a_n-\alpha|};について考える。
もし、&mathjax{a_n};が&mathjax{\alpha};に収束すると考えると、下の図のようになる。

CENTER:収束する &mathjax{|a_n-\alpha|}; の一例。
#ref(NumericalSequence2.png,center)

&mathjax{\epsilon};の値を適当に(サイコロでも振って)決めてみると、
上の図のようにグラフが波打ってれば、&mathjax{|a_n-\alpha|}; が&mathjax{\epsilon};を下回ることは複数回ある。
いっかい下回ったとしても、また&mathjax{\epsilon};より多くなりことも、ありうる。
しかし、もし、&mathjax{a_n};が収束する(つまり、nが大きくなるほど&mathjax{|a_n-\alpha|}; が0に近づいていく)なら、ここを最後に、二度と&mathjax{|a_n-\alpha|}; が&mathjax{\epsilon};よりも大きくならない、そんなポイントがあるはずだ……と考えてみる。

そのポイントが上図のNであり、Nより先のnについては、必ず&mathjax{|a_n-\alpha|};は&mathjax{\epsilon};より小さくなっている。


また(サイコロでも振りなおして)&mathjax{\epsilon}; の値を決めてやる。
そうすると、うまーくNの値を取ってやれば、同じように、Nから先は、&mathjax{\epsilon}; より小さいようにすることができる。


&mathjax{\epsilon}; をどんなにいじっても、どんなに小さくしても、うまーくNを決めてしまえば、Nから先は、&mathjax{\epsilon}; より小さい……これが収束である。

とはいえ、&mathjax{\epsilon}; が変わる度にNを定めていては、無限に証明を書く羽目になってしまう。そこで、Nを&mathjax{\epsilon}; の式で書いてみてはどうだろうか?(次章へ続く!)


**数列の収束の証明の定型文[#geab78f8]

では、実際に具体的な&mathjax{a_n};を与えられたとき、証明する手続きを考えてみると、「うまーくNを、&mathjax{\epsilon}; の式で表したら、&mathjax{ | a_n - \alpha |}; が&mathjax{\epsilon};より小さくなった。」 というふうになる。これをちゃんと書けば、

----
【&mathjax{\displaystyle \lim_{x \to \infty} a_n=a}; の証明:定型文 】
任意な &mathjax{ \epsilon>0 }; に対して、
1つの自然数を &mathjax{ N> ( \epsilon の式 ) };  となるようにとれば、
&mathjax{ n>N }; ならば、&mathjax{ | a_n - \alpha | =  \fbox{nの式} < \fbox{Nの式} <\epsilon };
----

このとき、具体的な&mathjax{a_n};が与えられていれば、
&mathjax{ | a_n - \alpha | =  \fbox{nの式} < \fbox{Nの式} <\epsilon };
の部分は単純な式変形で決められる。
そして、&mathjax{ N> ( \epsilon の式 ) };は、&mathjax{  \fbox{Nの式} <\epsilon }; を式変形すれば書ける。


**実際に使ってみる [#j3623a08]

【問題:&mathjax{\displaystyle a_n= \frac{1}{n} }; の極限を求めよ】

【考え方】
&mathjax{\displaystyle | a_n - \alpha | }; &mathjax{\displaystyle = |\frac{1}{n}-0|}; &mathjax{\displaystyle = \frac{1}{n} };

…… &color(Red){&mathjax{\displaystyle N<n };より、};

&mathjax{\displaystyle \frac{1}{n} < \frac{1}{N}  <\epsilon};

よって、式変形すると、

&mathjax{\displaystyle N > \frac{1}{\epsilon}  };

これで、&mathjax{\epsilon};の式が求まったので、証明文は以下のように書ける。


----
【&mathjax{\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{1}{n}=0}; の証明】
任意な &mathjax{ \epsilon>0 }; に対して、
1つの自然数を &mathjax{\displaystyle N> \frac{1}{\epsilon}  };  となるようにとれば、
&mathjax{ n>N }; ならば、&mathjax{\displaystyle | a_n - \alpha | =  \frac{1}{n} < \frac{1}{N} <\epsilon };
----



*数列が無限大へ発散する [#s0256564]

**無限大へ発散の定義 [#g0cf030f]

これも &mathjax{\epsilon - N}; 論法と似たような考え方をする。
ただし、収束の時には 「&mathjax{\epsilon};より小さい」を考えたが、
無限大への発散の時には「Mより大きい」を考える。

※文字を変えるのは気分の問題。&mathjax{\epsilon};は小さい数の印象があるため、別の文字を用意した。Mではなくて、Kなどを使う時もある。

**数列の無限大への発散の証明の定型文 [#eeff27b4]

&mathjax{ a_n が \infty に発散する証明:定型文};

任意な &mathjax{ M>0 }; に対して、

1つの自然数を &mathjax{ N> ( \epsilon の式 ) };  となるようにとれば、

&mathjax{ n>N ならば、  | a_n - a | =  \fbox{nの式} > \fbox{Nの式} >M };
*ここから先編集中 [#j8f527ff]


*参考 [#r03e98db]
[[ε-N 論法を使った証明について&BR; 4 月18日 清野和彦 >https://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~nkiyono/kiyono/13_odat-01b.pdf]]

*コメント欄 [#h4618324]
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