日本語の方言アクセント のバックアップ(No.3)


理論

日本語の発音の抑揚は音の高低で行われる。
この音の高低のうち、文法などの文的なもので決まる高低と、単語を区別するための高低がある。
このうち、文の音の高低をイントネーション (intonation)、単語を区別するための音の高低を(狭義の)アクセント (accent) という。

類聚名義抄と『類』

類聚名義抄は11~12世紀に成立した辞書であり、当時のアクセントを記した『声点』が記載されている。これに記されたアクセントを名義抄アクセントとよばれ、日本語アクセント祖体系を再建するうえで、重要な資料となった。

名義抄アクセントと、各地の方言は強い対応関係があり、方言間の対応関係を示すために、類聚名義抄で同じアクセントであった単語をまとめてグループ化し、『類』と呼ぶこととなった。
これにより、各方言のアクセント体系を簡便な記号で表せる。

例えば、1拍の名詞には3つのグループがあるため、各グループを1拍1類、1拍2類、1拍3類と呼び、その三つと例外について記述するだけで、下記の表のように(ただし表は制作中)1拍のアクセント体系が表せる。

各種アクセント

京阪式アクセント
内輪式アクセント
中輪式アクセント
外輪式アクセント
二型式アクセント

内輪式、中輪式の成立過程の東西の違い

日本の方言アクセントのうち、外輪式、中輪式、内輪式、京阪式は、周圏的構造をなしている。しかし、東日本と西日本ではその成立経緯は異なる可能性がある。

東日本の方言アクセントの分布境界線の研究により、外輪式と中輪式の接触期間は極めて長いことが判明している。また、中輪式と内輪式の接触期間は、外輪式と中輪式の接触期間より短いと想定できる分布を成している。

一方、中国地方においては、東日本のような長期の接触期間は想定できないように思われる。

この場合、東日本の中輪式と内輪式は時間差を持って現れた可能性があるのに対し、西日本の中輪式と内輪式の出現は、より新しい現象である可能性がある。