日本語の方言アクセント のバックアップ(No.13)


1拍・2拍の類別体系による分類

  • I-1/2/3, II-1/2/3/4/5:伊吹式

  • I-1/2/3, II-1/2.3/4/5:中央式(京阪式)
  • I-1/2/3, II-1.3/2/4/5:讃岐式(四国東北部式)
  • I-1/2/3, II-1.5/2/3/4:真鍋式

  • I-1/2.3, II-1/2.3/4.5:内輪式
  • I-1.2/3, II-1/2.3/4.5:中輪式
  • I-1.2/3, II-1.2/3/4.5:外輪式、魚島式
  • I-1.2/3, II-1.2.3/4/5:出合式
  • I-1.2/3, II-1.3.5/2/4:本島式、山城谷式
  • I-1.3/2, II-1.3.4/2/5:向井比式
  • I-1.3/2, II-1.3.5/2/4:高見島式
  • I-1.3/2, II-1.4/2.3/5:垂井式C型

  • I-1/2.3, II-1/2.3.4.5:垂井式A型
  • I-1.2/3, II-1.2.3/4.5:加賀式
  • I-1.2/3, II-1.2.4.5/3:新魚島式
  • I-1.3/2, II-1.4/2.3.5:垂井式B型

N型アクセント

  • I-1/2/3, II-1/2.3/4.5:三型
  • I-1.2/3, II-1.2/3.4.5:西南部九州二型
  • I-1.3/2, II-1.4.5/2.3:二型

系統

中央式
類統合:I-1/2/3, II-1/2.3/4/5
別名:京阪式
中央式田辺型
別名:補忘記式
分布:田辺市周辺、加西市・三田市・西脇市、旧南淡町、高知県中央沿岸部
中央式龍神型
別名:徳島式
分布:旧龍神村、徳島県東部
祖体系:中央式田辺型
中央式京都型
祖体系:中央式龍神型
中央式勝浦型
分布:旧南島町地区・大内山地区、那智勝浦・太地・三輪岬
祖体系:中央式京都型
相賀型
類統合:I-1/2/3, II-1/2.3/4.5
分布:北牟婁郡紀北町相賀
祖体系:中央式勝浦型 or 尾鷲型
尾鷲型
類統合:I-1/2/3, II-1/2.3/4.5
分布:尾鷲市
祖体系:相賀型 or 中央式勝浦型
長島型
類統合:I-1/2.3, II-1/2.3/4.5
分布:北牟婁郡紀北町(旧紀伊長島町地区)長島、二郷
祖体系:相賀型
讃岐式
類統合:II-1.3/2/4/5
讃岐式観音寺型
讃岐式池田型
讃岐式丸亀型
讃岐式高松型
山城谷式
類統合:I-1.2.3, II-1.3.5/2/4
分布:三好市山城町、美馬郡つるぎ町
出合式
類統合:II-1.2.3/4/5
分布:三好市のうち旧出合小学校区
垂井式A
類統合:I-1/2.3, II-1/2.3.4.5
垂井式B
類統合:I-1.3/2, II-1.4/2.3.5
垂井式C
類統合:I-1.3/2, II-1.4/2.3/5
内輪式
類統合:I-1/2.3, II-1/2.3/4.5
中輪式
類統合:I-1.2/3, II-1/2.3/4.5
中輪式宇和島型
祖体系:中央式田辺型
中輪式九島型
祖体系:中央式田辺型 or 中輪式宇和島型
外輪式
類統合:I-1.2/3, II-1.2/3/4.5
西南部九州二型アクセント
類統合:I-1.2/3,II-1.2/3.4.5

類別と式の理論

日本語の発音の抑揚は音の高低で行われる。
この音の高低のうち、文法などの文的なもので決まる高低と、単語を区別するための高低がある。
このうち、文の音の高低をイントネーション (intonation)、単語を区別するための音の高低を(狭義の)アクセント (accent) という。

類聚名義抄と『類』

類聚名義抄は11~12世紀に成立した辞書であり、当時のアクセントを記した『声点』が記載されている。これに記されたアクセントを名義抄アクセントとよばれ、日本語アクセント祖体系を再建するうえで、重要な資料である。

名義抄アクセントと、各地の方言は強い対応関係があり、方言間の対応関係を示すために、類聚名義抄で同じアクセントであった単語をまとめてグループ化し、『類』と呼ぶこととなった。
これにより、各方言のアクセント体系を簡便な記号で表せる。

『類』の統合

各『類』に別々のアクセントが割り当てられていたものが、時代の変化によって、同じアクセントになることを類の統合という。例えば、東京の中輪式アクセントでは、名詞の1拍1類、1拍2類が同じアクセントとなっているため、この二つがかこのどこかの時点で統合したことになる。これが大事なことだが、余程のことがない限り一度統合した類が再び分離することはない。一度統合した『類』に、また類別に従ったアクセントを割り当てるためには、持っ話されていない過去の方言、あるいは類が分かれている方言から、辞書的に導入する必要があり、多数の単語から成る『類』に対してこのようなことを行うのは現実的でない。

類の統合状況を表すのに、表記規則を定める。
例えば、名詞について1拍1類と1拍2類が同じで、1拍3類が異なるとき、
I-12/3
のように、名詞の拍数をローマ数字で、各類をアラビア数字で表記し、スラッシュで区切ることで、第1類・第2類が統合し、第3類が異なることを示す。

『類』と『式』

現在、研究が進んでいる1拍名詞、2拍名詞を基に、その『類』がどう統合しているかで、各方言アクセント体系が大まかに分類されている。これを『式』と呼ぶ。なお、同じ『式』でもアクセントが異なる場合は、サブカテゴリーとして『型』などを用いる。
ありうる『式』は多数あり、実在する『式』も多数あるが、主なものは、京阪式、内輪式、中輪式、外輪式、二型式、それから無アクセントである。

内輪式、中輪式の成立過程の東西の違い

日本の方言アクセントのうち、外輪式、中輪式、内輪式、京阪式は、周圏的構造をなしている。しかし、東日本と西日本ではその成立経緯は異なる可能性がある。

東日本の方言アクセントの分布境界線の研究により、外輪式と中輪式の接触期間は極めて長いことが判明している。また、中輪式と内輪式の接触期間は、外輪式と中輪式の接触期間より短いと想定できる分布を成している。