実数 のバックアップ(No.3)


実数の性質

実数は幾つかの性質を持つが、
教科書では4つの性質に整理されている。

  • 性質[I]:四則計算ができる
  • 性質[II]:大小の順序がつく
  • 性質[III]:稠密性
  • 性質[VI]:連続性

性質[I]:四則計算ができる

 実数に限らず、加減乗除のうち
足し算(加)、引き算、(減)、掛け算(乗)
については整数・有理数の範囲でも成り立つし、
割り算(除)も有理数の範囲で成り立つ。
なじみ深い性質なので、深入りする必要もないだろう。

性質[II]:大小の順序がつく

これも、自然数、整数、有理数の範囲で成り立つ話で、
実数特有ではない。
1<2
のように、当たり前の話である。
しかし、「大小の順序がつく」ことによって、
以下の二つの性質が引き出せる。

性質:無限である

これは性質[I]と[II]から引き出せる。
どんな実数にも大小の順序がつくということは、
どんな大きい数でも、それより大きな数があることになる。

もし、最後の実数なるものがあると仮定すると、
(最後の実数)<(最後の実数+1)
「最後の実数」より大きな数が存在するため、矛盾する。

というわけで、実数や整数に「最後」はなく、無縁である。

性質:アルキメデスの公理

これも性質[I]と[II]から引き出せる。

0<b<a
a,b∈
つまり、実数aとbを用意して、bがaより小さいとき、
a<nb となる自然数nが存在する。

具体的に書けば、
a=100
b=3
としたとき、
0<3<100
なのだが、
n=34としてやると、
100<34×3 となる。
(別にnは35だって、100だって、1億だっていい。)

実数aがどんなに大きくても、
実数bがどんなに小さくても、
すごく大きい自然数nをbに掛けてやってnbにすれば、
aを越えることができる。
そういう希望ある数学的結論である。

性質[III]:稠密性

これは有理数の範囲でも成り立つ。
実数が稠密である、つまり、すごくたくさん詰まってるというのは、
高校レベルでも、教科書のレベルでも当然のものとして扱う。

二つの実数、例えば、区間 [ 1.23 , 1.56 ]
つまり、1.23と1.56の間……という狭い範囲ですら、
無限の有理数と実数が含まれている。

性質[VI]:連続性(カントールの公理)

性質[I]~[III]とは異なり、この性質は実数にしかない。
言い換えれば、これが、有理数でない実数の性質を明らかにしたものであるが、
だからこそ、実数で一番難易度が高い部分でもある。

カントールの公理

一般的な話はおいておいて、
ここでは、具体的に一つに実数を用いて考える。
何を選んでもいいが、円周率
π = 3.14159265
を使ってみる。

区間1番= [ 3 , 4 ] とすると、 3<π<4
区間2番= [ 3.1 , 3.2 ] とすると、 3.1<π<3.2
区間3番= [ 3.14 , 3.15 ] とすると、 3.14<π<3.15
区間4番= [ 3.141 , 3.142 ] とすると、 3.141<π<3.142
区間5番= [ 3.1415 , 3.1416 ] とすると、 3.1415<π<3.1416
区間6番= [ 3.14159 , 3.14160 ] とすると、 3.14159<π<3.14160
区間7番= [ 3.141592 , 3.141593 ] とすると、 3.141592<π<3.141593

こんなふうに、
πを含みながら、1桁づつ増やしていって、
区間を狭め続けることができる。
今は区間7番までしか書いてないが、
どんなに狭くても
(例えば区間の幅が0.00000000000000001であっても、)
πを含むように区間を設定できる。

では、上記のノリで、区間を狭めていき、
区間100番、区間1億番、そして区間∞番まで作っても、
πを含むように設定は可能である。

区間∞番まで作っちゃったとき、
区間1番から区間∞番まで共通で含まれてる実数はπだけで、
他の実数は含まれてない

区間を設定するために使った数は小数、
つまり有理数の一種だった。
しかし、有理数で表記した区間を狭めて行くと、
無理数にたどり着ける……というのがポイント。

参考資料(含むPR)

微分積分学:裳華房(矢野 健太郎、石原 繁)